「破壊的イノベーションの理論」について、ゲーム業界を例にざっくり説明してみようと思います その3

公開日: : 最終更新日:2016/06/09 アプリ開発, 副業・働き方       

  

会社員A@クリーニングスです。

「破壊的イノベーションの理論」をテーマにした続きモノ、第3回目でございます。

第1回:「破壊的イノベーションの理論」について、ゲーム業界を例にざっくり説明してみようと思います
第2回:「破壊的イノベーションの理論」について、ゲーム業界を例にざっくり説明してみようと思います その2

前回までは音楽プレイヤー、家庭用ゲーム機、動画プレイヤーといった製品を題材に、主にハードウェア観点での破壊的イノベーションの流れを考えてきましたが、今回はゲーム業界におけるソフトウェアの観点、特にスマホゲームに絞って考えてみます。

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制限が多かったガラケーアプリ時代

前回も書きましたように、スマホゲームの起源をさかのぼると、ガラケーのゲームアプリになります。

この時代に流行っていたのは、テトリスのようなシンプルなゲームや、初代ファミコンと同レベルのレトロな作品、またはファミコンの移植版などが主なものでした。

ユーザーインタフェースとしては、テンキーで複雑なアクションゲームをプレイするのは難しいので、あまりリアルタイムの瞬発的な操作が求められないものが多くを占めていました。

当時のハードではグラフィックもまだまだショボく、容量も少ないので、なかなかガラケーオリジナルの大作と呼ばれるような作品は出ていません。

グラフィックなどの面においてスマホ出現前のガラケーアプリのひとつの到達点と思える作品は、個人的にはファイナルファンタジー4の『The After』ではなかったかと思います。

zigsaw.jpさんから借用

(zigsaw.jpさんより借用)

このようにガラケーにはハードの処理能力的に多くの制限があり、あくまでも家庭用ゲーム機や携帯ゲーム機の劣化版でしかなかったため、それらを駆逐するほどまでには至りませんでした。

ユーザーインタフェースの劇的な変化

しかしスマホの出現により、この状況が一気に変わります。

グラフィックの処理能力が格段に上がっただけではなく、タッチパネル全体をコントローラーとして使えるため、バーチャルパッドという形で家庭用ゲーム機の操作を再現することができました。

しかし、タッチパネルではなかなか微妙な操作感などが得られないため、スマホは家庭用ゲーム機を代替するのではなく、タップやスワイプなどを取り入れた独自のユーザーインタフェースとして進化していきます。

その進化の一例として、片手でのワンフィンガー操作に特化したインタフェースとしては、コロプラの作品に搭載されている『ぷにコン』が1つの到達点ではないかと思います。

punicon

新しいインタフェースを活用したゲーム

家庭用ゲーム機とは異なるインタフェースの進化を遂げたことにより、スマホゲームは全く新しいユーザー体験を作り出すことに成功しました。

そして、そのインタフェースに特化した新しいジャンルのゲームソフトが次々と登場します。たとえば以下のようなジャンルの作品です。

・パズルゲーム(主にタップやスワイプを使う)
・引っ張りアクション
・タワーディフェンス
・放置系ゲーム
・脱出ゲーム

これらのゲームは、画面をスワイプしたり、画面上のアイコンやオブジェクトをタップしたりといったスマホ独特の操作で、タッチパネル全体をインタフェースとして使うことによって成り立っています。

このようなゲームが普及することによって、家庭用ゲームのインタフェースよりもはるかに直感的な操作ができるようになりました。

さらに、常に携帯するスマホとゲームが一体化してスキマ時間に遊べる手軽さから、これまであまりゲームで遊んでこなかった層のユーザーも取り込んでいくことになります。

その結果、グラフィック品質の向上や複雑な操作などで、どんどん「マニア向け」になりつつあった家庭用ゲームに対し、スマホゲームでライトユーザーが増加したことによって、ゲームのコンテンツ業界全体としては大きく成長を続けることができました。

ちなみにその成長を示す一端としては以下のような統計データがあります。少し小さくて見づらいですが、みずほ銀行が2014年に公開していたものです。なお赤と青のマーカーは引用元の画像に入っていたものなので、記事の内容とは関係ありません。

棒グラフの一番下の水色と灰色がコンシューマーゲームの市場で、ここ数年は縮小傾向にありますが、一番上の2項目がモバイルゲーム市場で成長傾向となっており、ゲームのコンテンツ市場としてはリーマンショック後の2009年以降は右肩上がりの成長になっています。

[出典:2014 No.5 コンテンツ産業の展望 - みずほ銀行 より]

[出典:2014 No.5 コンテンツ産業の展望 – みずほ銀行]

持続的イノベーションへの移行

このように、

①ハードウェアが進化し、
②それに合わせてユーザーインタフェースの思想にも激的な変化が起こり、
③その思想をソフトウェアによって実現することによって新しいジャンルのゲームが生まれ、
④これまでゲームで遊んでこなかったライトユーザーも取り込む結果となり、

ゲーム業界における「破壊的イノベーション」が起こりました。

しかし、そのような新しいユーザー体験も2016年1月現在ではひととおり出尽くした感があり、持続的イノベーションのフェーズに移行しつつあります。

たとえば放置系ゲームを例に挙げてみますと、初期は「なめこ栽培キット」のように育成と収穫をメインとした作品や、「アルパカにいさん」のようにキャラクターの進化をメインとした作品が多くを占めていました。

それがここ最近では、ゲームの紹介を見ただけでは一見放置系ゲームだとわからないような設定のものや、ストーリーを少しずつ解放して楽しむ作品など、ゲームのコア要素よりも周辺の付加価値に注力したものが増えていってます。

しかしコア要素となっている「時間経過による経験値アイテム取得」、「キャラクターの成長と進化」、「アイテムのコンプリート」といったものは、大きくは変わっていません。これは他のゲームジャンルにおいても同様の状況です。

ゲームソフトで「破壊的イノベーション」を起こす方法

ここまでにお伝えした内容をいったん整理すると、「ゲームのソフトウェアで破壊的イノベーションを起こすためには、新しいインタフェースを活用した操作と、新しいコア要素を持ったゲームジャンル」が必要だということです。

この2つはいずれも、ユーザーがそのゲームを遊びたくなるためのモチベーションを刺激するものであり、「ユーザー体験」という言葉でまとめることができます。

ここ最近のゲームソフトにおいて、この条件を満たす破壊的イノベーションとしては、Mixiの『モンスターストライク』が該当するかと思います。

それまではミニゲーム的な作品での使われ方が多かった「引っ張りアクション」という新しい操作を、パズドラ的な「スタミナ消費型ダンジョンRPG」と組み合わせることによって、新しいユーザー体験を生み出し、爆発的に普及しました。

それによって「引っ張りアクションRPG」というジャンルが確立され、後に続く類似作品が続出し、ついには先駆者であるパズドラを越えて、モンストが2015年の売り上げで世界一になったことは記憶に新しいかと思います。

参考:モンスト、世界のゲームアプリ収益ランキングで1位に – 米App Annie

つまり、次にまた大きな流れが来るとしたら、これまでのゲームに「新たな価値」を加えたものではなく、「新しいユーザー体験」を提供できるものであり、類似作品が続出するような「新しいジャンル」となるような作品になるはずです。

去年のトレンドでは「Q」「Brain Dots」のような物理パズルのジャンルがそれに近いのかもしれませんが、比較的ユーザーを選ぶところがあるジャンルなので、まだモンストほどの大きな流れにはなっていません。

次に来るゲーム業界の「破壊的イノベーション」と「VR」の可能性

新しいハードを使わずに、アプリ単体だけでイノベーションを起こせるかというと、先述のとおりゲームの新しいジャンルとしては少し飽和しつつあるという印象が正直なところです。デベロッパーとしてはあまり言ってはいけないのですがw

ハードの性能的な面では、スマホの処理能力は既にパソコンや家庭用ゲームと同等以上のレベルになってきており、グラフィックだけで言うと、『メビウスファイナルファンタジー』が、スマホゲームとして市場が求める需要の限界点に至っているように思います。

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このままでいくと、スマホというデバイスのインタフェースが変わらない限り、「破壊的」と呼べるほどのユーザー体験の変革をソフトウェアだけで起こすのは難しく、いずれ家庭用ゲームと同じような道をたどることになるでしょう。

世の中も薄々そんな空気になりつつあって、次の流れとしてはVRへの期待が大きくなり、今年は「VR元年」と言われたりもしています。

しかし、VRを楽しむためのハードウェアはライトユーザーには少しハードルが高く、人間の「楽をしたい」という本能に反するものなので、単にリアルな映像体験だけでは爆発的な普及には至らないと私は考えています。

仮にもし、触覚とか嗅覚までリアルの世界を再現するくらいまでになれば可能性はありますが、それを安価かつ手軽に提供できる仕組みができない限り普及は難しいと思われ、そこに至るまでには早くてもあと2,3年はかかるでしょう。

何より「ながら遊び」ができないのがVRの一番イタいところです。これはヘッドマウントがゴーグルに代わったとしても同じで、VRが完全にゲームの世界に没入するものである限り、スマホゲーム並みに普及するイメージが湧きません。

さいごに

現在のスマホのインタフェースのままで、新しいユーザー体験を提供し、新しいジャンルとなり得る作品。

それがどんなものかわかっていれば、我々もこんなに苦労しなくていいのですがw、1ゲーマーとしてはそのような次のイノベーションの出現を楽しみにしたいと思います。

では全3回に渡ってお届けしてきたこのシリーズですが、以上で終わりです。長いことお付き合いありがとうございました。

  

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