インディーズゲーム開発者が狂気を武器にして大手メーカーと戦うための考え方

公開日: : 最終更新日:2016/05/02 アプリ開発, ニュースキュレーション       

  

会社員A@クリーニングスです。

特に天変地異などが起こっていなければ、この記事がアップされている今現在、私は出張で東京の街をさまよっているはずです。

先日、めちゃくちゃ良いセミナーレポートを見つけました。Unite2016というイベントで登壇された、インディーズゲームスタジオ『Throw the warped code out』一條貴彰さんの講演なのですが、ここ数年で一番腹落ちした内容で、ムチ打ちになるくらい何度もうなづいてしまいました。

今回はそちらの発言の一部を共有すると共に、個人開発者としてのゲーム制作の姿勢についていろいろ考えさせられる内容だったので、それぞれの発言に対するコメントを書きます。

参考リンク:[Unite 2016]インディーズゲームを世に知らしめるのは開発者自身が抱く“狂気”。セッション「Unityを使った個人ゲーム開発における『収益化』の現状と未来」聴講レポート

ゲームは総合的なエンターテイメントである

一條氏はまず個人によるゲーム開発の難しさを説明した。そもそもゲームはグラフィックスやサウンド,ストーリーなどを組み合わせた総合的なエンターテイメントであるため,個人で開発する場合は,どこかに苦手な部分が生じてしまい,そこで投げ出してしまう可能性が高い。

ツールアプリと比べ、ゲームアプリでは作らないといけないものが多いのですが、そもそもプログラミングの能力と、グラフィックやサウンド、ストーリーを作る能力は、獲得するために必要な要件が大きく異なります。1人で両方の能力を兼ね備えている人というのは非常にレアな存在であり、RPGでたとえると戦士でありながら魔法を使えるような、上級職のジョブに該当するのでしょう。

我々も2人でそれぞれ得意なところを分担しながら活動していますが、何もかも1人だけでやっていたら、どれだけの時間がかかっていたか想像もつきません。というか普通に手が回らないと思います。そういう意味では、自分の苦手な部分を人に任せるのは、時間を短縮するという点でも有効な手段です。

作品を完成させるために自分を追い込む

自分にムチを打つという意味では,開発中のゲームを展示会に出展することも効果的だという。さらに出展することを周囲のゲーム開発者に言って回ったり,SNSで告知したりすることで,自分を追い込んでいく。つまり,きちんと締切を設けるというわけだが,これを一條氏は「展示会ドリブン」と表現していた。
また,展示会への出展は,多くの人にプレイしてもらうことによって不具合が見つかり,それを修正し,ゲームの練度を上げられるというメリットもあるとのことだ。

これは、我々がこうして毎日ブログを更新している目的の1つでもあります。定期的に活動の内容を報告し、やりたいことや目標なんかも全て公開していますので、それが程よくプレッシャーにもなっています。何も宣言していなければ、やめることにも抵抗が無くなりますからね。

我々もこれだけ「いつかヒットを出す!」と宣言しつつ、周囲の方からも「そのうちブレイクする」と励まして頂き、はや数年が経ちますが、この状況ではもはや引き返すこともできませんw

これはグループでの活動においても同じ話で、1人だけでやっていたら挫折したところで誰も困りませんが、2人以上ですとそう簡単にはいきません。メンバーに対して迷惑をかけることにもなりますので、一蓮托生とまで言いませんが、何かを継続する上ですぐ近くに他人の目があるというのは非常に有効なのだと思います。

また、展示会については、我々はそういう大きな場に姿を現すことは極力避けたいと思っていますので、リアルイベントを企画することで自前でそういう場を作ってみることにしました。先日もとある開発者さんとお会いしていろいろフィードバックを頂いたのですが、そうやって開発中の作品に第三者の目を入れる機会は積極的に増やしていきたいと考えています。

狂気のゲームであっても遊ぶ人の視点は忘れない

狂気を見つけることができたら,それをいかにしてゲーム化するかを考えることになる。一條氏は,このとき重要なポイントとして,「こんなゲームを作りたい」ではなく,「こんなテーマのゲームがあれば,プレイヤーはこう楽しんでくれる」と考えることを挙げた。これはユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの大前広樹氏の「遊ぶ人の楽しむ心をデザインする」という言葉を言い換えたものだ。

これは我々が一番反省しないといけないところですw

これまでずっと、人が遊びたいものより、自分たちが作りたいものを優先してやってきました。その結果、未だに大ヒットと呼べるような作品を作ることはできていません。次の作品からようやくマジメにそこを強く意識し始めたところです。

ゲームに限らず、顧客視点でものごとを考えるのは商売の基本です。いくら狂気をベースとして尖った作品を作っているとしても、ヒットさせたいのであれば当然、それを遊ぶユーザーの気持ちをもっと真剣に考えないといけません。尖った作品を作っているからこそ、尖ったユーザーの好みを徹底的に考えた上で、さらにその少し斜め上を目指すべきです。

ちょうど我々がそのことに気付き始めたタイミングだったこともあり、ジャンルは違いますが同じく尖ったゲームを作っている人からこのような発言があったのは、強烈に心に刺さりました。

「こんなゲームを作っているのは自分しかいない」という自信

つまり狂気は,スキルとは無関係に「こんなゲームを作っているのは自分しかいない」という自信と,他人との揺るがない差別化につながるというわけである。さらには,どんな逆境になったとしても,その狂気に対して興味を抱くファンが応援してくれるという。

また,こうしたゲームは必然的にニッチな層を狙うことになるが,その人達に確実に刺さるよう,狂気を軸に内容を尖らせる必要があると一條氏は語る。逆に刺さらない人からの反対意見は,「Not for you」の精神で受け流すべきとのこと。

ここだけは、我々が唯一と言っていいくらい自信があるところかもしれませんw

今まで決して万人に受け入れられるような作品は作ってこなかったのですが、それでも数百人、数千人という人に我々のアプリを遊んで頂けたということは、冷静に考えたら結構すごいと思いますし、それでレビューもそこそこ高得点を保ったままですので、まだまだ日本も捨てたもんじゃないなとw

特に、これまでも何度も書いていますが、我々の中でも最低の傑作である『オヤジが濡れる』という作品。あれを未だに毎月50人くらいがダウンロードしていることは、自分たちでも全くの予想外でしたし、何より意味がわかりません。あの作品に実名で高評価のレビューを付けてくれた人とは親友になれそうな気がします。

このことは、我々と同じような趣味・嗜好を持った人が、確実に世の中に一定数存在するということなので、どれだけ思うように作品がヒットしなくても、その存在が心の支えになっています。もっとその人たちを大切にして、満足して頂ける作品を作らないといけないと改めて感じさせられました。

せっかく個人で開発するなら尖った作品を作るべし

一條氏は,万人に楽しまれるゲームの開発は大手のゲームメーカーが仕事として取り組むべきことであるとし,せっかく個人で開発するのであれば,尖った内容を楽しんでくれる層に集中したほうがいいと語る。また,そのほうが「この人達は必ず楽しんでくれる」という安心感が生まれるそうだ。

ここは大手メーカーと個人開発者とのスタンスの違いを明確に示すところですね。これは私も全くの同感で、個人のインディーズ作品でしか作れないもの、そこにしかない魅力というのが確実にあると思います。ゲームの業界に限らないかもしれませんが。

ただしこれは商業的な感覚を完全に度外視するという意味ではなく、インディーズの魅力を持ったまま、ギリギリのところでメジャーな層にも受け入れられるような作品を作れるようになるのがベストなのでしょう。その上で、尖った内容を楽しんでくれるお客様を裏切らないようにする事も大切です。

特定のお客さんの「嗜好品」となる作品を目指す

一條氏がとくに説明を加えたのは,「お客さんを選ぶ権利を意識する」と「嗜好品としての価値意識を持つ」の2つ。前者については,上記のとおりターゲットではないプレイヤーに「お断り感」を出していいというもので,「Back in 1995」では対象年齢を30歳前後に絞り込んでいる。
(中略)
後者の嗜好品としてのゲームについては,フランスで漫画(バンド・デシネ)が「9番目の芸術」とされている例が挙げられ,一條氏は「ぜひ大人の趣味として楽しめるゲームを作りましょう」「一握りの人だけが分かる“良さ”のあるゲームを作ってください」と,聴講している個人ゲーム開発者達に呼びかけていた。

最後に、これが「尖った内容」についての発言の総括みたいな感じかもしれません。

尖った内容に注力するということは、結局は「お客さんを選ぶ」ということです。これは単にユーザーを絞りこむのが大事というわけではなく、そこまで尖ったユーザーを意識し、それ以外のユーザーを「お断り」するほど徹底的に「尖り」を意識することによって、結果的に大手メーカーとも戦えるほどの個性を獲得できる可能性があるということだと私は解釈しました。

言うなれば、少し古いたとえになりますが、「あしたのジョー」における「ノーガード戦法」と言ったところでしょうか。無難なジャブを放つのではなく、ボコボコにされながらも、最終的にどんな強者も倒し得るほどの最強のクロスカウンターを放つイメージです。

全体を通しての感想

正直、私は一條氏について今回の記事で初めて存在を知りましたし、これまでにどんな業績がある方なのかも存じ上げておりません。よって成功体験の実績がある方なのかどうかも全く知りません。

しかしそれでも、言われている内容は非常に説得力がありましたし、私の中でこれまでモヤっとしていた部分を改めて構造化して代弁して頂いたような感覚でした。それは決して自分の抱く思想にとって都合の良い内容だからではなく、個人開発者が大手メーカーに対抗し得る戦略としても最良の選択肢と思えるほど、確信に満ちた発言だと感じられたからです。

一方で、やはり素直な気持ちとしては、自分と近しい考え方を持った人がこうやって活躍されていることには非常に勇気付けられましたし、それは同時に我々が情報を発信する場合においてもあり得ることなので、その気付きは新鮮な発見でもありました。

できればご本人と直接お会いしていろいろお話を伺ってみたいくらいなのですが、ここまで思考を整理していくと、今さら改めて語り合うようなこともなく、語り合うこと自体が野暮であるような気もしてきますw

今回のお話を伺って、自分たちのやっていることに改めて確信が持てたところもありますので、引き続き「尖った」精神を忘れることなく次回作もこだわりの一品にしていきたいと思います。

  

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